サーチ search 記事を探す
follow us
Instagram X

©2024 TSUZUKU Magazine. All Rights Reserved.

サーチ search 記事を探す
  • 軽やかに挑戦できるように、 自分に余白を作っておく。
  • 冷えや緊張を和らげて、 日々をしなやかに楽しむ。
  • 楽しむ気持ちを忘れずに、 たまの現実逃避も欠かさず。
  • 自分にフォーカスして、 湧き上がる感情を大切に。
フードクリエイター 小池 陽子さん

軽やかに挑戦できるように、
自分に余白を作っておく。

interview2025.05.26

ネイリストで耳ツボセラピストとしても活動する関根祥子さんから紹介いただいたのは、フードクリエイターの小池陽子さん。小池さんは、肉や魚、乳製品などの食材を使わないヴィーガン料理を軸にしたケータリングやイベントを行うほか、レストランの経営もしています。単なる食の選択を超え、ヴィーガンというライフスタイルを実践する小池さんですが、その姿はストイックというよりもかなり軽やか。フードクリエイター・経営者として忙しい日々を乗り切るための、心と体のケアについて話を聞きました。

プロフィール

小池 陽子さん
フードクリエイター 小池 陽子さん

こいけ・ようこ/1990年生まれ、宮城県出身。2012年大学卒業後、イギリス・ロンドンに留学。2014年、日本に帰国後、チーズ専門商社に就職。2015年、ヴィーガンレストランのホール業へ転職。2016年より、副業でヴィーガン料理のケータリング事業を始め、2018年に独立。〈SUNPEDAL〉のオーナーとしてヴィーガン料理のケータリング事業などを行うほか、日本各地のクリエイターをつなぐキュレーターとしても活躍している。

私のとある一日

見なければいけないものも見るために。

―小池さんがヴィーガンの世界に興味を持ったきっかけは何でしたか?

幼い頃から親の影響で玄米菜食が身近で、大学生の時にちょっとした好奇心で3ヶ月ほど肉を食べずに過ごしてみたんです。そしたら、体が軽くなって。当時は”ヴィーガン”なんて言葉も知らなかったのですが、なんだか調子いいなと。大学卒業後に留学したロンドンでは、フムスやファラフェルといったヴィーガンやベジタリアンフードがたくさんあって、それがすごくおいしかったんですね。完全菜食主義と聞くと、食べられるものが限られて、我慢を強いられているような印象があるかもしれませんが、食の選択肢の一つとしてごく自然に楽しんでいたんです。それにイギリスにはヴィーガンやベジタリアンの友達も多く、私自身、植物性の食事をメインにしながら、時々魚や肉も食べるフレキシタリアンになっていきました。

そこから本格的に完全菜食主義にのめり込むようになったのは、帰国後、東京のヴィーガンレストランに勤めるようになってからですね。

―のめり込むポイントはどこにあったのでしょう?

まず、肉や魚、卵、はちみつ、乳製品など動物性の食材を使わずに、限られた素材でこんなにおいしい料理を作れることがシンプルにすごいなと思いました。また、私が働いていたヴィーガンレストランは開放的な雰囲気で、海外のお客様もたくさん来てくださっていて、たまたまかもしれませんが、ハッピーでエネルギッシュな方が多かったんです。ヴィーガンって体だけじゃなくて、心にもいい作用がありそうだなと思って。当時私はホールスタッフとして働いていたのですが、お客さんと友達になって、ご飯を食べに行くようになりました。食を通じて、誰かと親しくなれるというのもうれしかったし、環境に配慮した価値観にも共感でき、自然とヴィーガンになっていました。

ただ、振り返ると当時はストイックすぎた気がします。ヴィーガンのものしか口にしないとなると、外食の選択肢が限られるので、交友関係が狭まってしまう。ヴィーガンの友達としか会っていないと気づいた時に、自分がかなりニッチなところにいると感じました。

きっと、このままここにいては、見なければいけないものも見えないし、自分が知るべきことも知らないままになってしまいそうな気がして。もっといろんなライフスタイルを知るべきだと感じ始めたあたりから、自分で料理を作って、もっといろんな方達とかかわることが大事なんじゃないかと思うようになりました。それでレストランで働きつつ、副業でヴィーガン料理の事業を始めることにしたんです。

―事業を始めるにあたって大事にしたことはなんでしたか?

当時はヴィーガンというと宗教的な食事と勘違いされていることも多く、ヴィーガンの人だけに向けてビジネスを成り立たせようとすると限界があると感じていました。ヴィーガン料理を食べたことのない人にも食を楽しんでもらうなら、”ヴィーガン”と全面に打ち出すよりも、シンプルにおいしいものを届けることが大事だなと。そして、食べた時の驚きや喜びも感じていただきたかったので、見た目にも華やかで、食べることが楽しくなるような料理を提供しようと決めていました。

とはいえ、それまで料理人経験はなかったので、本当に小規模からのスタートでした。健康意識の高い方に向けて、フムスの作り方を伝える料理教室をしたり、5、6人分のお弁当をつくってお届けしたり。当時は車の運転に自信がなかったので、自転車を漕いで買い出しから配達までしていたんです(笑)。陽子の”SUN”と自転車の”PEDAL”を組み合わせて、〈サンペダル〉という屋号を掲げることにしました。

その後、知人のカフェにポップアップで出店するように。月に一回程度の出店でしたが、回を重ねるごとにお客さんがたくさん来てくださるようになって。だんだんレストランの仕事との両立が難しくなり、独立することにしたんです。レストラン時代に仲良くなったスタイリストさんや編集の方、また、口コミやSNSを通じていろんな方が依頼をくださって、ケータリング事業が主軸になっていきました。決まったメニューはなく、アレルギーや避けている食材などご要望を伺って、その方達に寄り添うメニューを組み立てるのは今も変わっていません。

ケータリングを依頼してくださる方の中には、浅田舞・真央さん姉妹もいて、その後、真央さんの広告撮影の現場など50、60名に向けた大規模なケータリングも受けるようになったり、また、サステナブルのファッションブランドとしても知られる「ステラマッカートニー」のコンテンツ制作に携わらせていただいたりと、仕事の幅が広がりました。

ケータリング事業が軌道に乗りはじめてから、2019年にはオンラインでお菓子の販売も始めたんです。すると、数ヶ月後に新型コロナウイルス感染症が広まり、ケータリングの仕事がほぼなくなり、オンラインに頼らざるを得なくなりました。ありがたいことにオンラインでは、完売が出るほどたくさんの注文をいただきました。すべてに対応するには私一人では困難になり、それでスタッフを雇い入れることにしたんです。

それまでは、仕込みも調理も梱包も全部自分でやりたかったのですが、より多くの人に届けるためには、そんなこと言ってられない。人の手を借りることができるようになってから、もっといろんなことをやりたいと思うようになって、国内外でポップアップをするようにもなり、そこでさまざまな生産者や作り手の方との出会いがありました。

先が見えない方がワクワクする。

―今日は小池さんのアトリエ兼レストラン「SUNPEDAL」に伺っているのですが、こちらへは去年にお引越しされたそうですね。場所が東京の下町というのが意外でした。ここに決めたきっかけは?

仕事内容が広がってアトリエが狭くなったため、新しいスペースをずっと探していて。新しくアトリエを構えるなら、国内外のポップアップで知り合った生産者や作り手の方を呼んでマーケットができたらと。外に人がたむろしても、近隣に迷惑がかからないところが理想でした。

それまでアトリエを渋谷区に構えていたので、当初はその辺りで探してたんですが、東京の下町は天井が高い物件や戸建てなど魅力的な物件があって、自分がやりたいこともできそうだなと。ただ、周辺にたくさんのお店があるわけではなく、飲食店として経営していくには好立地とはいいがたいかもしれませんが、だからこそ、できることがあるんじゃないかと。自分自身がぬるま湯に浸かっていたくないという気持ちもあって、あえて全然知らない場所に飛び込むことで、リフレッシュスタートを切ろうと思いました。

―副業を始めた頃から、いつかはお店を持ちたいと思っていたのですか?

いえいえ! 全然思ってなかったです。「このスペースを使ってたまにイベントをできたら」ぐらいに思っていましたが、場所を持ったからには、レストラン営業をやってみてもいいかもしれないと思うようになって。実際に始めてみると、ケータリング以外で私の料理を食べられる場所ができてうれしいと喜んでくださる方も多くいて、やってみてよかったなと思っています。

そもそも副業を始めた頃はそんなに先のことはあんまり考えてなかったです(笑)。自分が求められていることに応えることで精一杯。でも、それが純粋に楽しかったんですね。

―小池さんのお話を聞いていると、キッチン未経験ながらも食の事業を始めてみたり、知らない場所へ店舗を構えてみたりと、とても軽やかだなと感じます。

あまり計画性がないのかも(笑)。5年後、10年後のことは全然考えてなくて、その時に求められてること、自分が直感的にこれだなって思うことをやってきました。ただ、〈SUNPEDAL〉を始めたばかりの頃は、自分のことだけを考えればよかったんですが、今はスタッフがいて、レストラン営業もオンライン事業もケータリング事業も回していかないといけない。不安がないとは言いませんが、先が見えないことの方がワクワクするというか。

あと、フェーズによって仕事の内容がどんどん変わっていく、この働き方が自分に合っていていると感じるんです。仕事に飽きちゃったら終わりだから。仕事をずっと好きでい続けるために、どんどん新しいことをやっていきたい。

―今後やりたいことはありますか?

これからは自分の手を離せるように人を育てていきたいです。今は新しく始めたレストラン経営に必死ですが、上手に人に頼りながら、いろんな仕事を回していけるように。私の性格上、しばらくしたら、また新しいこと、やりたいことが出てくると思うので、その時、軽やかに挑戦できるように、できるだけ自分に余白を作っておきたいです。

上手に気分を切り替える。

―日々忙しく過ごしている小池さん。日頃どういったケアをしていますか?

嗅覚がすごく敏感で、ケミカルな香料を嗅ぐと体調が悪くなるので、自然の香料で気分転換するようにしています。レストランの営業前や、ランチとディナーのアイドリングタイムに、パロサントを焚いて空気の入れ替えと合わせて、空気を浄化させるように。愛用しているReCent Product.(リーセントプロダクト)のパロサントは精油が染み込まれていて、火を灯すとほのかに精油の香りがするんです。香りが3種類あるのですが、この「Mariau(マリアウ)」は、フランス産のラベンダー、ベルガモット、クローブやパチュリ、ジャスミンの精油が加えられていて、火を灯すとしだいにミステリアスな香りがほのかに立ち上がり、空気が柔らかく変化していくのを感じられます。

―心のケアはどうでしょうか?

東京から物理的に離れるようにしています。東京にいると常に仕事で頭がいっぱいになってなかなか心が休まらないので。仕事が終わって、家に帰っても「明日キッチンに入ったらあれをしてこれをして、スタッフにあれをやってもらって」と考えたり、「あの人に連絡を返さなきゃ」とか「SNSを更新しなきゃ」とか交感神経がオンになってて。きれいな景色に囲まれていると携帯を見なくなるので、仕事のことを忘れられます。外に出る時は自分の好きな香りを必ず持っていくようにしているんです。ロールオンのボトルには好きな香料が入っていて、こめかみや手首につけると深呼吸ができる感覚があるので気持ちが落ち着きます。

―仕事がある日の体のケアはどうでしょうか?

仕事中はほぼ立ちっぱなしで、座る時間がないのですが、アトリエを東京の東側に構えてから、電車通勤が始まり、そこで30分程度座れるようになりました。通勤中は(関根)祥子さんに教えてもらった耳のケアをしています。手で触ってほぐしたり、引っ張ったり、リフトアップのツボを押したり。耳ツボは座ったまま、自分の手でできるからいいですよね。もちろんプロの方にやってもらった方が違いはあるんですけど、電車の中で手軽にできるのがいい。ツボを押したりマッサージしていると耳がジンワリしてきて、体全体も温かくなってきて気持ちがいいです。

フェイバリット favorite 使い続けたいもの

柿渋染めのエプロン

柿渋染めのエプロン

仕事を快適にしてくれる大事な相棒、何気ない日常を彩る日用品など、“いつもの自分”をつくってくれる、お気に入りのアイテムはありますか?
これまでも、これからも、長く使い続けたいものを教えてください。

出張で黒磯に行ったときにたまたま見つけた柿渋染めのエプロン。絶妙な色合いと風合いが気に入って、使っていたら、一度壊れてしまって。作り手の方に連絡して直してもらったんです。そしたら、私の背丈に合わせてリサイズしてくださって、さらに使いやすくなりました。私の足の長さに合わせてスリットが入っているので、体の動きをじゃまされず、しゃがみやすい。ストラップが下がらないようにストッパーもついてて、生地は厚めなんですけど、肩が凝りにくい作りに。もしまた壊れたとしても、修復してもらいながら、できる限り使い続けたいです。

ドリンク drink お風呂上がりの一杯

いろんな効能があるブレンドハーブティー

いろんな効能があるブレンドハーブティー

私たちのチームは「お風呂と健康」について長年、研究してきました。心をほぐし、体をしっかり温めてくれる入浴タイムの後、喉を潤すためにどんなドリンクを飲んでいますか?
愛飲している一杯を教えてください。

ハーブティーやメディカルブレンドティーを飲んでいます。今日は「The Little Sunshine」のオリジナル ブレンドハーブティーを用意しました。ゴツコラやシベリアンジンセン、ネトルなど免疫力を高めて、ストレスケアにフォーカスしたブレンドです。カップ&ソーサーは千葉県で作陶されている鈴木圭太さんのもの。お店でも使っています。

Photo/Yu Inohara

Text & Edit/Mariko Uramoto

フレンズ friends 友達から友達へ

思いがつながり、バトンを渡すようにインタビューが続いていきます。