デザイン性の高いアイテムをさらりと着こなし、全国各地を旅する服飾ディレクターの岡本敬子さん。Instagramに投稿される写真には、おしゃれを楽しむ気持ちとさまざまな土地で過ごした楽しい日常が映し出されています。旅先や出張先など慣れない環境でも自分らしくいるためにどんな工夫をされているのでしょうか?日々で大切にしていること、これからの理想の生き方について伺いました。
プロフィール
おかもと・けいこ 文化服装学院スタイリスト科卒業後、スタイリストオフィス、アパレルPRなどを経て、2010年から旅のミックススタイルをテーマにしたブランド「「KO」を立ち上げる。現在はnanadecorにて「KO」ラインを展開するほか、東京・千駄ヶ谷のセレクトショップ「pili」のディレクター、アタッシュ・ド・プレスとしても活躍。著書に『私の定番』、『好きな場所へ自由に行きたい』(ともに光文社)など。
@kamisan_sun
旅が多いからこそ、日常のルーティンを大事に
―今日は岡本さんがディレクションをされているセレクトショップ「pili」に伺っています。こちらはいつ頃オープンされたのでしょうか?
5年ほど前ですね。私を含めて5人のスタッフと一緒に切り盛りしています。ここでは誰が偉いとか上下関係はなくて、みんながバイヤーで、それぞれ見つけてきたいいものを提案しながら、何を置くか決めているんです。流行りは意識せず、自分たちが本当にいいと思ったものだけしかありません。偏愛に満ちたセレクトショップです(笑)。
―お店のあちこちに気になるアイテムがたくさん並んでいますが、岡本さんがつけていらっしゃるアクセサリーもすごく目を惹きます。
ネックレスは鹿児島の作家さんに作っていただいたものです。薩摩焼の産地として有名な美山地区にアトリエを構えていらっしゃって、遊びに行かせてもらった際に好きな石を選んでオーダーしました。鹿児島は夫の出身地で、義母が暮らしていた家があるので、4、5年ほど前から東京と鹿児島と行き来しています。
ブレスレットはタイのチェンマイで見つけたもの。トライバルアクセサリーで200年ほど前に作られたものだそうなんです。ちょっとくすんでいたんですが、日本に戻って磨いてみたらすごくピカピカになりました。手に入れてからほぼ毎日つけていますね。左手のリングはCALLMOONという日本のブランドのもの。波と月をモチーフにしているところが気に入っています。右手のリングは夫の知り合いの方がデザインしたものです。アクセサリーはシルバーが好きですね。ネイティブアメリカンが魔除けにつけていると聞いてから、私もシルバーアクセサリーを取り入れています。悪いものを取り去ってくれる気がして。
―岡本さんは国内外問わず旅に行かれることが多いですが、東京ではどのように過ごされていますか?
東京ではすごくシンプルな生活を送るようにしているんです。元々朝型で、夏は4時ぐらい、冬は5時半ぐらいに起きています。身支度を整えて、白湯を飲んでから1時間ほどウォーキングを。戻ってからシャワーを浴びて、朝ご飯。簡単に作れるので最近はずっとお粥を作ってます。朝食を終えてからメールを返信したり、事務作業をしたりして仕事を始めます。私の周りは朝型の方が多いので、打ち合わせやアポイントもすべて午前中に入れています。お昼ご飯を食べてからまた仕事に戻って、16時以降で終わり。それ以降仕事はしません。一緒に働いている人の中には子育てされている方もいるから、このタイムスケジュールでも何も不都合はないですね。
夜ご飯は16時ぐらいから食べ始めます。夫婦共々お酒が好きなので15時くらいから飲み始めることも。外でご飯を食べて大体18時には帰宅してゆっくり過ごします。コロナ禍で夜ご飯のお付き合いが少なくなって以来、基本的にずっとこの生活を続けています。私たち夫婦に合わせて16時から飲みに出かけられる人もあまりいないので(笑)。だいたい22時ぐらいに就寝。早寝早起きを実践するだけで快適ですね。次の日の目覚め方が違います。
─朝ご飯にお粥を食べるようになったのは何かきっかけが?
消化によくて胃腸に負担がかかりにくいというのもありますし、手軽に作れるところがいいですね。パンも大好きなのですが、食べる時はどうしてもスープとかサラダとかサイドメニューを作りたくなるのでそれがちょっと大変で。あと、花粉の時期は小麦粉を控えるようにしています。それだけでいつもの調子が戻りやすいんです。毎朝必ず季節のフルーツを食べて、糖分と水分を摂取するようにしています。
─不調を感じた時にすることはありますか?
気圧の変化でいつもの調子が出ないときはあえてカフェインを摂ります。血管収縮作用があるそうで、私の場合は飲むと偏頭痛が緩和しやすいんです。
―お粥で胃腸を整えたり、カフェインで痛みを和らげるなど、食事で調整されるんですね。
食事も大事ですし、月に一度漢方薬局に行って体調に合わせた漢方を処方してもらっています。あと、整体にもこまめに通っています。日頃から移動が多く、外食で食べ過ぎたりして、内臓の位置がずれてしまいがちなので、整えてもらうんです。整体は25年ぐらい同じところに通っています。ずっと同じ人に施術していただいているので、体の変化に気づいてもらいやすいのもいいですね。
自分を安定させるおまじないのような香り
─初めて行く旅先など、慣れない場所でも自分らしく気持ちよく過ごすために意識していることはありますか?
好きな香りのアイテムを用意しておくようにしています。私、無香料のものって本当にテンションが下がっちゃうんですよ(笑)。常にいい香りに包まれていたいんですね。一つの香りに限定しているわけではなくて、好きな香りがミックスされているのもいいですし、つけていると自分の香りになっていくのもいいですね。とにかく生活の中に香りがほしい。
例えばキャンドル。これはイングランドのヴィーガンフレグランス「lo」のものなのですが、ディレクターのトレイシーは幼い頃から花やガーデニングに親しんでいたそうで、そうした香りの記憶をキャンドルに吹き込んでいるそうです。天然由来の成分で作られていて、黒い煙や煤が出にくいところもいいですね。「pili」ではいくつか香りをセレクトしているのですが、今つけている「gertrude」はローズをベースにペッパーやブラックカラント、スペアミントなどをミックスした香りで、植物園の中にいるような気持ちにさせてくれます。
ヘアにまつわるプロダクトにも香りは欠かせません。私はかれこれ30年ほどシニョンスタイルなのですが、髪がパサついているとまとめにくいので、髪を洗った後は「Moii」のヘアオイルで保湿しています。他にはあまりないようなスパイシーな香りがいいですね。まとめ髪にはヘアバームを使っています。同じく「Moii」のもので、こちらはウッディな香り。バームは髪だけじゃなくて体にもつけられるので、旅にも重宝します。なるべく荷物を減らしたいので一つで二役こなしてくれるバームはすごく便利。Amazonで手に入れやすいところも気に入っています。
「ボーテ デュ サエ」のヘアミストはスズランやフリージア、シダーウッドやマンダリンをブレンドしたフローラル系の香りで落ち着きます。こちらはルームスプレーとして使うことも。出張先のホテルなど慣れない場所でも空中にシュッシュッと散布すると快適に過ごしやすくなります。
ハンドクリームはこまめに塗りながら、好きな香りに包まれるのでこちらも欠かせません。今のイチオシは韓国発のReSaltz(リソルツ)のハンドクリーム。以前お土産でいただいてからすごく気に入って、先日韓国に行った際も自分で買いに行きました。漢方素材や精油をオリジナルでブレンドしたいい香りなんですよ。ハンドクリームは自分にしかわからない程度にほのかに香るのもいいですね。テクスチャーは重めでしっとりしたつけ心地も快適です。
―岡本さんはリングやバングルなどいつも素敵なアクセサリーをおつけになっているので、手元に自然と目線が集まりますよね。
本当はもうちょっとケアしたほうがいいんでしょうけど(笑)、海外の女性アーティストの手のようなゴツゴツっとした手元も好きなんです。ボリュームのあるジュエリーが好きなので、ネイルはしないようにしています。爪にまで色が載っていたらケバケバしく感じてしまうので。
歳を重ねても楽しく生きられるコミュニティ作り
―これからやりたいことはありますか?
女性が歳を重ねても楽しく働けるコミュニティを作りたいですね。結婚している人、そうでない人、子供がいる人、いない人、いろんな生き方がありますから。どんな選択をしても自分らしく生きられる場所があったらいいよねってそんな話をいつも仲間と話しています。仕事のつながりだけじゃなくて、困ったことがあったら助け合いながら生きていけるそんな環境を作るのが理想です。
昔の東京にはそういうつながりがあったと思うんですけど、今は希薄になっている感じがするんですね。もう一つの拠点を置いている鹿児島は人のつながりがすごく豊かなんです。年配の方から若い方、年齢関係なく、誰かが困っていたら助け舟を出す気風が残っている気がする。そんな関係性が東京の街にも戻ってくるといいなって。そのためにも私たち世代が楽しく働いて、スープの冷めない距離程度に繋がっていることが大事なんじゃないかと。だってそうしないと、後に続く方たちが不安になるだろうなって思うんですよ。